昔、知人から聞いた話です。
ウィーン・フィルの楽員を招いてスピーカーの聞き比べを行ったそうです。ひととおりの試聴を終えて、彼らが選んだスピーカーは、(当時の私の印象では)情報量の少ないナロウレンジのスピーカーでした。
このスピーカーを選んだ理由が秀逸で、曰く、このスピーカーは、我々演奏家が聞こえてほしくない音が聞こえて来ず、聞こえてほしい楽音だけを選別して鳴らしてくれるからだと。

かなり以前のMJ誌上での討論会で、レイオーディオの木下氏が似たような事をおっしゃってました。
氏が知り合った多くの演奏家が家でどんな再生装置で聴いてるかを片っ端から訊いてみたところ、ほとんどが貧相な機器で聴いているという事。
理由を訊ねると、多くが「そこで何をやってるか解りさえすればいい、別に音楽を楽しもうとは思っていない」と言う返事だったそうです。
ところが、ただ一人だけ立派な装置で聴いておられる方が居たそうで(オンケンのスピーカーシステムを使われていたそうです)、理由は「自分はフランス音楽が好きなので、微妙な音色が再現できる装置で聴かないと楽しめない」と言う事で、ようやく救われた気がしたとのこと。